名興文庫 編集部のつぶやきコラム

はじめまして、名興文庫 編集部概念です。
今日はマナーのおはなしをつぶやこうと思います。

その壱 応募作品のマナー

応募のマナー
言い換えると、名興文庫概念の好感度アップをねらう方のための心得ってところですね。
ですから、好感度なんか気にしない! という方は、パスしてくださって結構です。気になる方……各種企画などへの応募をお考えの方や、どんなものからでも新しいアイディアを見つけてやるぜ! という猛者のみ、この先へお進みください。

さて、このコラムは編集概念が担当します。
理念の表明というよりは、名興に関わる──ひょっとしたら創作全般にお役立ちの──実用的な雑感をシリーズでつぶやこうというものです。名興文庫の編集概念ですから、ほかでは通用しないこともあり得ます。ケイさんちやエスさんちでは買ってもらえるかもしれないけど、ウチでは買いません。「うちはうち、よそはよそ!」というやつです。よそんちの子には時間の無駄かもしれません。それもふまえて、この先にお進みください。

フィルタリングがくどい?
そうかもしれません。というのも、今日つぶやきたいのは、まさにこのことなんです。

出版社にはカラーがあります

「お前の血は何色だ?」という表現があります。
主に、「血も涙もない冷血漢」を婉曲になじる際に使われますね。「自分とは相容れない、その行いに反感を覚える。言うところに到底納得しようがない」主観でみた際にそう感じる相手に使うものです。「主観」と言いますのは、相手サイドからみれば、もちろんそんなことはないからです。おおよそ正義と悪は一義的には語れません。一方にとって悪でも、他方にとっては善。そこまで極端でなくとも、ひとの物差しは千差万別です。共和党が赤で民主党が青。陰が黒で陽が白。アースノイドとスペースノイドの戦いも、地球人と異星人の遭遇も、ワンサイドで語ると、とたんに薄っぺらくなると私は思います。世界はカラフルであってほしい。そして出版各社もかくあってほしいのです。

実際に、「ハヤカワ」といえば、「岩波」といえば、「ポプラ」といえば(以下略)のように、出版元にもカラー、つまり特色がありますね。もし、それぞれが出版用の作品を公募したら、どうなるでしょう? 世の作家志望者は、それぞれのカラーを考慮した作品をもって応募するのではないでしょうか。

では、WEB小説投稿サイトを経由したコンテストはどうでしょうか? もしてかして何でもあり! とか 流行のライトノベル型が有利! だと思ってるひとはいませんか?

実際にWEBでみかけた公募の応募要項を読むと、文字数や応募期限などの物理的な制約のほかに、求めるジャンルや審査員、出版する場合のレーベル名が明記されています。場合によっては、特別賞として「SFファンタジー」賞や「(このような)キャラクター」賞などを設けてあったりします。これは明らかにリクエストされていますね。好みのタイプを明記しています。意外に応募者は読んでいないようで、サイトの運営者から追加のアナウンスがあったりします。審査員に知っているお名前があったら、その方の好みも加味するのがいいでしょう。

それでは、「好みに外れた作品は応募できないのか?」そんなわけはありません。ありませんが……これは求人に例えるなら、セールスを募集しているところにエンジニアとしての履歴書を持っていくようなもの。もちろん、技術の分かるセールスとしてPRポイントをおさえた内容に改稿しているなら話は別です。職域を外れたとしても採用したくなるような異能の持ち主も。ですが──。

さて、名興文庫のレーベルの特徴や担当者の好みについては、公式サイトのそれぞれのページに紹介をしています。また、目指す方向性については各種コラムから感じていただくこともできるでしょう。さらには、これまでに開催した企画の選評コメントから見えてくるものも。

もし、「手軽な娯楽」「内容よりも軽妙さ」に寄せた作品で各種企画に応募を検討される方がいましたら、これらのことを念頭に、適宜ぎゅっと中身を詰めてください。といっても、加減というものがありますよね。
『どのくらい?』
それを測る手段として、これまでの企画の応募作品から担当者のコメントを参考に読んでみるのはいかがでしょうか? そして、あなたのよく考慮して応募いただく作品も、担当者のコメントと共に、あなたが作品を削除しない限りは名興文庫のデータベースの一翼を担っていくことになります。次の応募者が参考として読みにいく参考作品として。

その作品をだれに読んでほしい?

書き方の作法といえば、『―(ダッシュ)や…(三点リーダー)は偶数個つなげるべし』『段落の行頭は一字下げるべし』『!(感嘆符)?(疑問符)の後はひとマス空けるべし』『会話文の前後は~』『一文は短く~』等々、あちこちで独自ルールが語られています。

はい、独自ルールです。実は公に統一された書き方ルールというものはありません。公文書を書きたい場合は別ですが、さほど気にしなくてよいものです。行頭の字下げくらいは、一般的な作文のルールとして学校でも習いますし多くの方にとって読みやすい場合が多いので、おすすめしたいところではあります。ただ、短文を連ねる場合など、その限りではないと思いませんか? 例えば、Twitter投稿文で字下げなど、あまり気にしないですよね。多くのWEB投稿作品も然りです(長文を書く方は、ぜひ字下げをお願いします)。ところで、形式的なものよりなにより、気になることがあります。それは、小見出しにある通り「だれのために書くのか」、ひいては「対象読者にとって読みやすい文章であるか」ということです。

WEB発のライトノベル作品について語られるものに「読みやすさ」を大事にするコメントをよく拝見します。であるならば、漢字表記は「常用漢字」という基準を用いるように気を配ることをおすすめします。常用漢字とはつまり、学校で習う文字です。見慣れない漢字に気をとられて(あれ、これなんて読むんだっけ?)読み進めるスピードが落ちてしまうなど、「ライトノベル」の名が泣くというもの。

用語はどうでしょう? 長いフリガナを多用した作品は、少々読みづらいと感じます。漢字が連続するのもそうですね。ここぞ!という箇所ではぜひ使用してください。ですから、それ以外はどうぞ控えめに。あるいは、ちょっとした工夫がほしいですね。

漢字と仮名のバランスが言われることもあります。常用漢字をメインにし、接続詞(しかし、および、なお、さらに 等)は仮名にする。おなじく補助動詞(動詞に添えられる「~て行く、~て来る、~し始める」他、本来の動詞の意を持たないもの)も仮名表記してみることをおすすめします。用字に迷ったときは、新聞社や放送局の「用字用語」に関するコラムが参考になりますので探してみてください。書籍を一冊購入してもいいかもしれませんね。

対して文芸作品はどうでしょうか? こちらは、常用漢字を基本にどこまで常用外漢字を採用するか、ぜひ検討してみてください。「醤油・しょうゆ・ショウユ」。それぞれにぴったりフィットする作品は違うはずです。作品ごとに、用字用語リストをつくってもいいでしょう。キャラクターごとの一人称や口癖も登録すると、もしかしたら楽しくつくることができるかもしれませんね。もちろん、検討の際はターゲットになる読者の属性もお忘れなく!

さて、最後の段落にある文章。あなたが実際に入力する際、こんな風になっていませんか?
『若しかしたら(用字用語リストを)楽しく作る事が出来るかも知れませんね』
最後はワークショップです。コラム内の文章をさがして、比較してみてください。

最後に

本コラムを最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
こんな感じのやわらかコラムをシリーズでお届けしたいと考えています。
できるだけお役に立ちそうなテーマで企画しますので、どうぞお楽しみに!
編集部概念でした。

参考になりそうなサイト

NHK文化研究所「ことばの研究」:https://www.nhk.or.jp/bunken/research/kotoba/index.html
文化庁「常用漢字表」シリーズ①― – 言葉のQ&A:https://www.bunka.go.jp/prmagazine/rensai/kotoba/kotoba_009.html
常用漢字チェッカー:https://joyokanji.info/